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ぶどう膜炎

ぶどう膜炎とは

gifぶどう膜とは、脈絡膜と毛様体、虹彩の三つをまとめて呼ぶ総称です。これらは眼球全体を包み込むよう広がっており、この組織に炎症が起こることを「ぶどう膜炎」といいます。

 

炎症が起こる原因、ぶとう膜炎の種類

ぶどう膜炎の原因の約半数はベーチェット病、サルコイドーシス、原田病の三大ぶどう膜炎が占めています。三大ぶどう膜炎のほかにも、膠原病、関節炎、腸疾患、皮膚疾患、脳神経疾患、耳鼻科疾患、糖尿病、あるいは血液疾患や悪性腫瘍などがぶどう膜炎の原因になっていることもあります。また、房水や硝子体液などの眼内液を検査して、初めてウイルスや細菌、その他の病原体の感染が原因であることがわかる場合もあります。
しかし、いろいろと調べてみても、原因がわからない場合が2~3割はあると言われます。ぶどう膜炎の診断はとても難しいので、どんな些細なことでもお話ししてください。たとえば飼っている動物の種類、生肉を食べる習慣があるか、海外への渡航歴、などの情報が診断に結びつくこともあります。

※当院では東京医科歯科大学眼科のご協力により眼内液を採取して遺伝子検査を行っており、ぶどう膜炎診断の精度を高め、治療に役立てております。

 

ぶどう膜炎の症状と経過

ぶどう膜炎では、炎症の部位や程度、合併症によって、以下のような眼の症状が現れます。片眼だけに発病する場合と、もう一方の眼にも症状が現れる場合があります。視力の低下炎症によって集まった細胞や血液成分が硝子体に広がると、眼球内部が濁り、霧がかって見えたり、まぶしくなって視力が低下します。また、炎症が網膜に及んだ場合や、続いて起こる白内障や緑内障によっても視力が低下します。飛蚊(ひぶん)症炎症で生じた眼球内の濁りや浮遊物によって、目の前にゴミのようなものが見えます。これは一度出てしまうと、なかなか消えません。充血虹彩や毛様体の炎症が強いときは、強膜や結膜(白目)が充血します。鈍痛炎症が起こると鈍い痛みを感じることがあります。また、続いて起こる眼圧異常で違和感が出ることもあります。

 

おもなぶどう膜炎

ベーチェット病

全身の皮膚や粘膜に発作性の炎症が繰り返し起こる慢性の病気です。原因はわかっていません。体内の異物を排除するときに集まってくる白血球が、異物はないのになぜか発作的に集まってきて炎症を起こします。ぶどう膜炎のほかに口内炎や外陰部の潰瘍、皮膚症状(赤い斑点のあるしこりなど)がよく現れます。地中海沿岸東部から日本にかけての昔のシルクロード沿いに患者が多くみられています。

眼の症状と経過

突然視力が低下するぶどう膜炎の発作を繰り返します。発作そのものは短期間で治ることが多いのですが、発作を繰り返すたびに眼球内の組織が傷つき、視機能が少しずつ低下し、失明に至ることがあります。眼科の難病の一つですが、近年、効果の高い薬が使えるようになり、失明に至る頻度が徐々に低くなってきました。

治療上の注意点

繰り返す発作に可能な限り速やかに対処し、炎症を短期間で引かせることが大切です。視力低下などの異常を感じたら、すぐに受診してください。また、ふだんから薬をきちんと点眼・服用し、発作をなるべく減らすようにします。この病気では血管や神経、腸に炎症が起こることがあり、その場合は専門の治療が必要です。からだの不調(例えば頭痛や下痢など)はすぐに医師に伝えてください。

 

サルコイドーシス

gif (1)全身の至るところに肉芽腫(にくげしゅ)ができる、原因の不明な慢性の病気です。肉芽腫とは、細菌に侵されたり炎症などで傷ついた部分の治癒過程でできる、正常な免疫反応です。しかし、この肉芽腫

そのものが炎症を引き起こしたり、消失せずに周囲の組織に影響して病気が発症します。ぶどう膜炎のほか、皮膚やリンパ節、肺、心臓、脳、腎臓など、さまざまな臓器・部位に影響が現れます。

眼の症状と経過

虹彩に肉芽腫を伴うぶどう膜炎を起こします。炎症が軽くなったり強くなったりしながら慢性的に続きます。飛蚊症がひどくなったり、緑内障や白内障になってしまうことがよくあります。高度な視力障害を伴うこともありますが、きちんと治療していれば、失明に至ることはほとんどありません。

治療上の注意点

慢性の病気なので気長に通院を続け、指示どおりに治療を受けてください。症状に変化がないからと安心して治療を中断すると、しばしば再発を招きます。心臓や肺にできた肉芽腫の影響で、不整脈や呼吸機能の低下など、早急な治療が必要になるケースもあるので、定期的な検査が欠かせません。

 

原田病(Vogt〈フォークト〉-小柳-原田病)

自分の全身の正常なメラノサイト(色素細胞)を標的にする自己免疫疾患です。自己免疫疾患とは、本来はからだに侵入する異物を排除してからだを守る免疫システムが、あやまって自分のからだの正常な組織を標的にして排除するように働いてしまう病気です。メラノサイトの多い部分に炎症が起こり、ぶどう膜炎と前後して、めまい・難聴・耳鳴りなどが現れたり、髄膜炎を併発して、そのために激しい頭痛が起こったりもします。その後、皮膚の一部が白くなったり、髪の毛が抜けたり白髪になったりします。

眼の症状と経過

症が強いと両眼に網膜剥離が起こってきます。この病気は、発病後の早い時期にしっかり治療して慢性化させないことが、とくに大切です。治療開始が遅れると再発を繰り返し、失明に至るケースもないわけではありません。

治療上の注意点

発病直後は入院して集中的な治療を受けます。慢性化した場合は、なるべく炎症がひどくならないように、根気よく治療を続けていきます。

 

その他のぶどう膜炎

リウマチなどの関節炎に伴うものや、ヘルペスなどのウイルスあるいは細菌によるぶどう膜炎などがあります。最近増加傾向がみられるのは、臓器移植後に免疫抑制薬を長期間服用している人やエイズによって免疫力が低下しているような人が、通常はほとんど感染しない弱いウイルスに感染して起こるぶどう膜炎です。自覚症状がほとんどないまま重症になることがあるので、このような人は定期検査が必要です。

 

ぶどう膜炎の治療

ぶどう膜炎は様々な原因で起こるため、治療方法も様々です。病気の状態によって、使う薬の種類も様々で、また使用方法も、点眼、内服、注射、点滴などがあります。時には、眼の手術が必要となることもあります。
現在の行われている治療で、すべてのぶどう膜炎がすぐに完治できるわけではありません。また、治療法の中には、頻度は低くても重大な副作用がおこる可能性があるものもあります。しかし、ほかの治療では効果が不十分な時には、強い副作用があると分かっていても、高い治療効果が期待できる場合には、その治療法を選択せざるを得ないこともあります。
ぶどう膜炎には、治療の難しいものや、長い時間がかかるものが多く、慢性化するものも少なくありません。また、再発しやすいのも特徴です。治療でいったん症状がよくなっても、薬の減量や治療を中止すると炎症が再燃することがありますので、薬の量を注意深く調節することが必要になってきます。軽い炎症や合併症がおこっていても、患者さんご自身では気がつかないことも少なくありません。症状が良くなっても、ご自身の判断で薬の量を減らしたり、中止したりせず、何かの理由で薬をきちんと使えなかったときには、医師に連絡して下さい。
また、医師の指示があるまでは、自己判断で通院を止めないで下さい。症状に応じて適当な間隔で受診し、炎症の状態やその他の異常がないかどうか、定期的に診察を受けて下さい。

 

※当院では東京新宿メディカルセンター眼科部長の藤野雄次郎先生よるぶどう膜炎専門外来を行っております。

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